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第6回 2010年8月18(水)

「音楽ビジネスは、ソフト&ハードの時代からコンテンツ&リーガルの時代に!」

音楽映像製作者協会 理事/有限会社エムエムラボ 代表取締役 森川 卓夫氏

音楽は数あるコンテンツの中でも、言語の壁や、国境の壁を乗り越えやすく、早くからグローバル化してきたために、権利意識も進んでおり、ビジネスモデルも比較的先端を行っていると思います。しかも長い歴史がある。今年は、日本コロムビア創立100周年にあたりますし、JASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)もすでに70年以上の歴史があります。その間に音楽業界に蓄積されてきたノウハウは膨大です。戦後誕生したテレビや映像業界よりは成熟もしていますし、新たな権利などが生まれても、比較的リーズナブルに対応ができる業界だと思っています。

さて、私が最初に就職した会社は日本コロムビア(現:コロムビアミュージックエンタテインメント)でした。そこでの仕事は、ジャズをメインに洋楽の原盤を日本でライセンス契約をしてレコードを発売すること。新人の頃は、原盤印税をはじめとするビジネス全体のストラクチャーの理解が難しく、契約にも苦労しました。知財の知識の必要性を実感した最初の経験です。

その次に、1985年に貸レコードが問題となりました。まだ貸与権が確立されていなかったため、業界の中心になっていた方々のロジックに説得力がなく、いらだったことを覚えています。その後、貸与権が創設されましたが、このときも知的財産権の重要性を強く感じました。

データ配信の時代に必要不可欠な、知財全般にわたる広い視野と知識

その後ワーナーミュージック・ジャパンという外資系の会社に転職。時あたかも、音楽データの配信ビジネスのスタート期と重なりまして、全く新しい音楽ビジネスモデルの中で、どうしたらWIN・WINの関係が築けるのかを、業界の方々と勉強しました。送信可能化権などという権利も新たに誕生し、著作権だけではなく、知財全般に視野を広げなければと、痛感させられました。

かつて音楽ビジネスは、ソフトとハードの両輪がうまく回ることで成り立っていたのですが、今ではすっかり姿を変えて、「コンテンツとリーガル」という両輪で走るビジネスになりました。加えて、ネットインフラに対する理解が必要です。

私自身、知財全般に関する知識を身につけるために、知財検定(現:知的財産管理技能検定)を受けることを中間目標にして勉強したり、金沢工業大学大学院の知的創造システム専攻(港区虎ノ門)に入学したりと、自分のスキルアップに努力しました。試験を受けるというのは、合格することも大切ですが、その間の勉強で得るものが大きいんですね。特に実務をやっていると、どうしても自分が持つ知識や経験が偏っていきます。試験勉強では、その偏って足りない部分がはっきりと見えてきます。

私は音楽業界のこれからの可能性を、まだまだ信じています。21世紀のキーワードは「知的エンターテインメント」だと、勝手に思っています。音楽ほど人々のイマジネーションをかき立てるメディアは多くないと思います。何かしら心に訴えかけてくる音楽は必ず残るでしょうし、さらに深化する部分もあるはずです。テクノロジーの進化と相まって、音楽に関わる権利も、どんどん新しいものが生まれていきます。それを理解し、人の心により知的な喜びを伝えることこそ、私のライフワークだと思います。


森川 卓夫氏 (音楽映像製作者協会 理事/有限会社エムエムラボ 代表取締役)

<プロフィール>

1946 年、京都府京都市生まれ。1969年、日本コロムビア株式会社(現コロムビアミュージックエンタテインメント株式会社)に入社。制作ディレクターとしてジャズ界初のデジタル録音を手がけ、のちに国内制作部門長に就任。1995年、同社退社後、株式会社ワーナーミュージック・ジャパンにて制作本部長、法務部長を務める。現在は音楽著作権分野を専門とする音楽ビジネス・コンサルタント、有限会社エムエムラボの代表取締役として活躍するかたわら、ミュージックビデオを製作するクリエイターの権利を守る協同組合、音楽映像製作者協会の理事を兼務。金沢工業大学大学院知的創造システム専攻修了。昭和音楽大学非常勤講師。